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コラムColumn

だんだん暖かくなってきて、日差しがまぶしい日も増えてきましたね。

海や山へ行ったり、どこか近所の公園などに出かけたりする機会も増えてくると思いますが、ここで一つ、特に普段から湿布を使っている人が注意すべき薬の副作用があります。

あなたは「光線過敏症」をご存じでしょうか?

簡単に言うと、湿布を貼っている場所に日光が当たると起こる可能性のある皮膚の炎症なのですが……

今回はこの光線過敏症について詳しく解説していきます。

次のような方はぜひ本文をチェックしてみてください。

この記事はこんな人にオススメ!


  • ✔日ごろ湿布を使っている人
  • ✔光線過敏症について知らない人
  • ✔光線過敏症を聞いたことがあるけどよく知らない人

光線過敏症とは、ある種の薬が体内で紫外線と相互作用を起こした結果、主に皮膚や眼に起こる有害反応のことです。わかりやすく言うと湿布を貼った場所に日光が当たると、その部分に皮疹が発生してしまう副作用です。

内服薬や注射薬などの全身投与で発症するものは「光線過敏型薬疹」や「薬剤性光線過敏症」、外用剤や貼付剤により局所で発症するものは「光接触皮膚炎」と呼ばれています。

症状や重症度に一貫性はみられないことが多いですが、軽度では痒みを伴う皮疹、重度になると水ぶくれ(紅斑、丘疹、水疱)、鱗屑などが起きるとされます。原因薬剤の中止が遅れると、長期にわたり色素沈着や色素脱失が残る皮疹(白斑黒皮症)が生じるため、早期発見・中止が大事です。

原因薬剤としては湿布以外にもいろいろなものがありますが、ここでは湿布に焦点を当てて解説します。


一般的にはケトプロフェンという成分を含有した湿布(ケトプロフェンテープなど)で光線過敏症は起こりやすいと言われています。実際にケトプロフェン外用剤は1986年の販売以降、2010年5月までに皮膚障害の副作用が4,252例(うち重篤症例は90例)報告されており、そのうち光線過敏症は2,028例(うち重篤症例は47例)報告されています。外用剤のなかでも、テープ剤が1,770例と最も多かったとのこと1)

しかし、日本で行われたレセプトデータの調査結果によると処方から2か月以内に光線過敏症と診断された患者は、ケトプロフェン外用剤の0.05%(35例/6万5,897例)に対し、フルルビプロフェン外用剤は0.03%(10例/3万2,893例)、インドメタシン外用剤は0.05%(11例/2万338例)、フェルビナク外用剤は0.02%(11例/5万975例)であり1)、特にケトプロフェンだけが抜群に光線過敏症を起こしやすいというわけではないようです。

そのため「ケトプロフェンじゃないから大丈夫」とは断言できず、基本的には湿布を使用している場合には注意する必要があるものだと言えるでしょう。



光線過敏症の発症を回避するためには、そのリスクを事前に知り、日光への対策について準備しておくことが大事です。

しかし、ケトプロフェン外用剤を使用中の患者に行ったアンケート調査では、光線過敏症が発現する可能性があることを知っているのは51%(n=373)2)と半数程度だったとのこと。

とっても大事なことなので、知らなかった場合はもちろん、知っていた場合も復習として、以下に主な対策や注意点を挙げるので、ぜひ参考にしてみてください。

①紫外線に注意しましょう

日光が原因のため、まずは屋外での活動をなるべく避けて紫外線に当たる機会自体を少なくするようにしましょう。実際に、モーラステープによる光接触皮膚炎は、月別でみると紫外線の強い5~8月に発生する頻度が高いことが示されています3)

主な原因となるUV-Aは窓ガラス越しの光にも含まれるため、室内や車内にいても遮光の必要があることには注意する必要があるでしょう。

②使用部位を覆いましょう

貼付剤は紫外線に当たりやすい部位にはできるだけ貼らないようにしましょう。もし紫外線に当たる部位に貼る場合は、外出の際には長袖、長ズボン、手袋、サングラスなどで遮光するようにしてください。

白い生地や薄手の服は紫外線を透過させるおそれがあるため、紫外線を透過させにくい色の衣服を着用するのがよいとされています4)。具体的には、衣服の色は濃い・暗いほど紫外線をカットすることが知られています。また、繊維の種類も紫外線カット効果に影響することがわかっており、UVカット繊維>ポリエステル・羊毛>レーヨン・ナイロンの順で効果が高くなります5)

首筋など衣服での遮光が難しい部位には日焼け止めを使用しましょう。「PA++++」と表示されている商品はUV-Aカット効果が高く、より効果的といわれています。首や手の甲など塗り忘れがちな部位にもしっかりと塗るようにしましょう。

③貼っている間だけ注意すればいい……というわけではありません

この光線過敏症は湿布を貼っているときだけ注意する必要があるのではと思ってしまいそうですが、決してそういうわけではありません。

貼った場所は数週間~数カ月後でも日光が当たると皮膚炎が起こることがあるからです。そのため、貼った後も長期の遮光が必要となります。時間が経ってからも発症するのは、貼付により真皮に浸透した薬剤が滞留しているためと考えられています。

多くの場合、症状は貼っている間や剥がした後1週間以内に認められますが、3~4週間後に発現した症例も報告されているため、使用をやめた後も最低4週間は紫外線を当てないように注意しましょう。

④譲り渡しはダメ、ゼッタイ

モーラステープによる光接触皮膚炎のうち、他の人から譲り渡されたものを使ったことで起こった割合は8.9%だったと報告されています。ケトプロフェン外用剤使用患者のうち、ほかの人に譲り渡したことがある割合は27%に上るとのアンケート結果もあります6)

大前提ですが、医療用医薬品は処方された本人のみが使用できます。湿布などの外用剤は気軽に他人に渡しやすいかもしれませんが、家族や友人であっても譲り渡しはしないようにしましょう。

⑤早期発見が大事!

日光が原因であることに気が付かないと日光に当たり続けて重症化してしまうことがあるため、早い段階で気付いて治療することが重要です。

発疹・発赤、紅斑、瘙痒感などの初期症状が現れた場合は、すぐに薬剤の使用を中止し、症状の出た部位を紫外線に当てないようにして皮膚科を受診するようにしましょう。

湿布をよく貼っている人もいるかと思いますが、特に夏など日光に当たる機会が増える際には光線過敏症に注意する必要があります。

湿布に限らず内服薬でも生じる可能性がある副作用ですが、今回は湿布にフォーカスを当てて解説しました。注意していれば避けられる副作用なので、湿布を使用する際には上述した注意点を意識するようにしてください。

(1)厚生労働省:ケトプロフェン外用剤による光線過敏症に係る安全対策について.医薬品・医療機器等安全性情報 No.276:3-8,2011

(2)久光製薬:安全性情報, No.37, 2020

(3)久光製薬:安全性情報, No.34, 2017

(4)厚生労働省、重篤副作用疾患別対応マニュアル「薬剤による接触皮膚炎」

(5)光接触皮膚炎発現後の注意 – 久光製薬

(6)久光製薬, 安全性情報, No.37, 2020