薬局風景

コラムColumn

#DI質問ピックアップ

Metro Medical Information〜くすりと在宅ナビ〜、この「#DI質問ピックアップ」のコーナーでは日々薬局に寄せられる質問の中から、特に深堀りしたいテーマについてピックアップして解説していきます。

第1回は「湿布の処方枚数制限」について!

よく患者さんからも寄せられる質問ですが、その背景や湿布の使用における注意点について薬学的な視点からもチェックしていきましょう。

湿布の処方日数制限とは?

ケトプロフェンテープなどに代表される一般的に「湿布」と言われる抗炎症薬の外用薬ですが、1回の処方で出せる枚数が決められています。

  • ケトプロフェンテープ
  • モーラステープ
  • ロキソプロフェンテープ
  • フェルビナクテープ

主な湿布薬の例

2025年4月現在では、1回の処方で63枚まで。

2022年の診療報酬改定でそれまでの70枚から63枚に上限が変更されました。湿布の種類が複数ある場合でも、その合計の枚数が63枚までとなります。

これはあくまでも1処方の対しての投与枚数制限であることや、医師がその必要性があってやむを得ないと判断して、処方せんおよび診療報酬明細書に記載すれば算定可能となることがあるという点には留意する必要があるでしょう。

【第5部 投薬】 通則 5 入院中の患者以外の患者に対して、1処方につき63枚を超えて湿布薬を投薬した場合は、区分番号F000に掲げる調剤料、区分番号F100に掲げる処方料、区分番号F200に掲げる薬剤(当該超過分に係る薬剤料に限る。)、区分番号F400に掲げる処方箋料及び区分番号F500に掲げる調剤技術基本料は、算定しない。ただし、医師が疾患の特性等により必要性があると判断し、やむを得ず63枚を超えて投薬する場合には、その理由を処方箋及び診療報酬明細書に記載することで算定可能とする。

【Ⅳ-7 医師・病棟薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用等の推進-①】 ① 医薬品の給付の適正化

この制限は薬剤給付の適正化および医療費の抑制効果、適正使用の推進などを狙って定められています。

適正使用の推進といっても、湿布なら別に何枚貼っても問題ないでしょう? そう患者さんから言われたり、思ったりしたことのある方もいるかもしれません。

確かに経皮吸収型のごく一部のNSAIDsの薬を除き、内服の鎮痛薬とは違って貼付剤は添付文書上では特に1日量の制限が設定されていないです。では、湿布は1日に何枚でも貼って良いのでしょうか? 

例えば代表的な湿布の成分であるケトプロフェンにおいて、ケトプロフェン20mg含有貼付剤を一度に8枚貼付した場合のAUC(血漿中濃度-時間曲線下面積→体内での薬の濃度)は18209±962 ng・hr/mLだったというデータがあります1)

この数値がどの程度なのかというと、ケトプロフェン50mg含有速放性カプセル剤(承認用法:1回50mg1日3回)を反復投与した場合のAUCは11550±560 ng・hr/mLである1)ことから考えると、単純計算で内服薬を常用量で服用した場合の約1.5倍です。つまり8枚貼付した場合は内服薬と同程度かそれ以上、内服薬と併用していた場合は常用量の倍以上を服用してしまっていることになります。これはケトプロフェン20mg含有貼付剤での話であり、もし40mg含有貼付剤だった場合は4枚貼ると同様の事態になるといえるでしょう。

湿布の成分や含有量、基材の種類によっても皮膚からの吸収率は異なると考えられるので、どの湿布においても血中濃度の推移がこのようになるとは限りません。しかし、貼付枚数が増えることに従い血中濃度が上がることは間違いなく、いずれ内服薬にも匹敵する血中濃度に到達しうるため、副作用リスクを考えると貼りすぎは避けたほうが良さそうですよね。

実際の症例報告でも、ケトプロフェン20mg貼付剤8枚を毎日長期に使用した患者が下部消化管出血を認めた症例2)や、ケトプロフェン40mg貼付剤を毎日 4~6枚使用した患者が胃潰瘍を認めた症例3)などがあります。上述した内容を裏付ける結果となっているのではないでしょうか。

まとめ

貼付剤は経口薬に比べ副作用を低減できるなど利点も多くありますが、その心配が全くないわけではありません。必要に応じて、患者さんには湿布の適正使用や、貼りすぎることの問題点についてしっかりと説明するようにしたいですね。

参考文献

(1)モーラステープL40mg インタビューフォーム

(2)Hirose S, Matsuura K, Kato-Hayashi H, et al. Gastrointestinal bleeding associated with chronic excessive use overdosing with topical ketoprofen patch in elderly patient. Scand J Gastroenterol. 2018; 53(1): 120-123.

(3)木本正英ほか, NSAIDs 経皮製剤(湿布)が原因と考えられた胃潰瘍の 1 例, 日本プライマリ・ケア連合学会誌 2019, vol. 42, no. 3, p. 158-161