
#添付文書改訂ピックアップ
ドンペリドンの妊婦禁忌が解除へ
✓変更の概要
ドンペリドン(商品名:ナウゼリン錠、ナウゼリンドライシロップ、ナウゼリン坐剤等)について、妊婦又は妊娠している可能性のある女性への使用に関する注意事項が変更されました(2025年5月20日付)。
主な変更点
変更前 | 「妊婦又は妊娠している可能性のある女性」への投与は禁忌 |
変更後 | 禁忌から削除され、「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与」に変更 |
✓ドンペリドンについて
効能・効果
- ・成人:慢性胃炎、胃下垂症、胃切除後症候群による消化器症状
- ・小児:周期性嘔吐症、上気道感染症、乳幼児下痢症による消化器症状
- ・抗がん剤やレボドパ投与時の悪心・嘔吐
対象となる症状
悪心(吐き気)、嘔吐、食欲不振、腹部膨満、上腹部不快感、腹痛、胸やけ、あい気(げっぷ)
✓変更の根拠
今回の変更は安全性に関する以下のような新しい知見が集積されたことによります。
- 1.動物試験の再評価
- ◯催奇形性が認められたのは臨床用量の約65倍という極めて高い用量での結果
- ◯臨床用量の23倍では催奇形作用は認められていない
- ◯最新のガイドラインでは、臨床用量の25倍を超える用量での影響は、臨床使用においての懸念は小さいと記載されている
- 2.疫学研究の結果
- ◯妊娠初期におけるドンペリドン使用による先天異常のリスク増加を示す報告はない
- 3.国内ガイドライン
- ◯「妊娠初期のみ使用された場合、臨床的に有意な胎児への影響はないと判断してよい医薬品」に分類されている
- 4.海外での使用状況
- ◯英国、カナダ、オーストラリア、フランス、ドイツでは妊婦への使用は禁忌とされておらず、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に投与すべきと記載されている
これらのことを踏まえ、添付文書上の記載が「禁忌」から「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与」へと改訂されることになりました。
まとめ
妊娠悪阻(つわり)の症状(悪心・嘔吐)はドンペリドンの適応症状と類似しているため、妊娠に気づかずに処方されるケースがありました。これまでは妊娠判明後にドンペリドンが妊婦禁忌であることを知った患者が妊娠継続に対して不安を抱えて人工妊娠中絶を選択する可能性があることが指摘されていましたが、今回の変更によりそのような場合でも過度に不安を抱えることなく妊娠を継続できる環境となりました。
なお、つわり自体にはドンペリドンの適応はないため、今回の禁忌解除は積極的につわりの治療に対して使用することを推奨するものではないことには留意しておく必要があります。
参考情報
- ◯2025年5月20日 医薬安発0520第1号(https://www.pmda.go.jp/files/000275431.pdf)
- ◯令和7年度第2回 医薬品等安全対策部会安全対策調査会資料(https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001481188.pdf)
- ◯国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」